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天才スライによる唯一無二にしてファンクの最高傑作「暴動」にしびれろ!!

      2017/06/11

funkという言葉を辞書で引くとこんな意味が出てくる。

  • おじけづく、尻込みする
  • (気分の)落ち込み、憂鬱
  • (俗)黒人の体臭

 

僕たち日本人が一般的に「ファンキー」という言葉に持っているイメージとはちょっと違うよね。

 

SLY & The Family Stone5枚目のオリジナルアルバム暴動(原題:There’s A Riot Goin’ Onはまさにそんな「憂鬱」「落ち込み」といった暗く不吉なイメージに満ちたスライの最高傑作だ。

 

決して楽しいアルバムとは言えないが、なぜか繰り返し聴いてしまう、聴いてはいけないものだから聴きたくなる、そんな魔力に溢れたアルバムなんだ。

 

 

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当時のスライ

slystone_contest

 

このアルバムが製作された1971年頃、スライは多忙を極めると同時にドラッグ中毒、自身のアイデンティティと世間との隔絶、キング牧師の暗殺などによる公民権運動の迷走、黒人社会の行き詰まりなど・・・様々な要素がスライを苦しめていた。

 

ステージをすっぽかすなどの奇行も目立ち始め、バンドメンバーとの不協和音も大きくなっていってしまったスライ。

 

そんな状況の中でスライは一人スタジオに入り、レコーディングを行った夢も希望もないアルバム。

天才は苦しみ、引きこもり、暴動を作った。

 

A面

 

Luv n’ Haight

タイトルの音だけ聞くと「愛と憎しみ」だがスペルが違っている。

60年代にヒッピーの聖地であったサンフランシスコのヘイトアシュベリーのヘイトはこのスペルなので、愛と平和の60年代への回顧の意味もあるのかもしれないね。歌詞の内容もドラッグの影響が色濃く出たものだ。

 

1曲目からこれまでのヒットを意識したスライのサウンドとは全く違うぞというのを感じさせるもので、超初期のリズム・ボックスでこれだけのファンクグルーブを生み出す才能はまさに天才としかいいようがない。

 

Just Like A Baby

部屋の隅で嘆き、つぶやくようなスライのボーカル、虚無的なフレーズを繰り返すギターが不気味なスローファンク。

 

当時のスライは本当に赤ちゃんのようにまっさらな状態に戻りたかったのかもしれない。

そんなスライの苦しみが痛いほど伝わってくるトラックだね。

 

Poet

My only weapon is my pen

「俺の唯一の武器はペンだ」と高らかに宣言する詩人スライ。

 

スライのキーボードプレイはスティービーワンダーの名盤Inner Visionに収められているLiving For The Cityに多大な影響を与えているという。

 

ほんとうにどうやってチープなリズム・ボックスだけでこんなヘヴィなグルーブが作り出せるのか・・・

 

Family Affair

女性ボーカル(妹のロージー)やエレクトリックピアノにビリー・プレストン、ギターのボビー・ウォーマックが参加するなど、引きこもりサウンドの中では若干の明るさと希望が感じられなくもないが、歌詞の内容は辛辣そのもの。

 

当時の黒人社会でも家庭の崩壊は大きな問題になっていたし、SLY & The Family Stone自身の崩壊のこととも取れてしまう。

 

勉強する子もいれば、放火する子もいる、どちらも母親にとっては可愛い子ども・・・

 

 

Africa Talks To You “The Asphalt Jungle”

当初はこの「アフリカは君に語りかける」というアフリカ回帰運動を意識させるタイトルがアルバムタイトルにもなる予定だったということで、かなりアルバムコンセプト的に重要な曲だったと思われる。

 

ちなみにサンボマスターの「サンボマスターは君に語りかける」はこのタイトルへのオマージュだろう。

 

60年代、スライは白人と黒人の音楽の融合(ロックとソウルやファンク)、そしてもちろん社会的にも白人と黒人の平和な共存は可能であると信じ、両者へ立ち上がれ(Stand!)と呼びかけていた。

 

しかし当時のニクソン政権下での公民権運動への圧力、小さな子どもたちにまで蔓延するドラッグ、黒人街のスラム化と犯罪の増加、黒人家庭の崩壊激増・・・

 

もはやスライはアメリカには夢も希望もなく、内にこもり、このうつ病のようなアルバムを作り始めた。

 

が、そんな情勢に対しマービン・ゲイが問いかけたのだ。

What’s Going On?

「いったい何が起こってんだ?」

 

すかさずスライは答えた

There’s a riot goin’ on

「暴動が起こってんだ」

 

そしてアルバムのタイトルはA面最後の曲である次の曲のタイトルへと変更された。

 

There’s A Riot Goin’ On

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スライはこの曲で実際に黒人たちによる暴動が起こっているという現状と、曲自体を0:00という「無」の曲にして、暴動など起きて欲しくないというスライの願いという正反対のことを1曲で同時に表現するという離れ業を見事にやってのけた。

 

CDでは完全に0秒の曲というのはデジタル的に収録できないので、4秒の無音のトラックとなっている。

 

B面

 

Brave & Strong

徹底的に内にこもっていたA面に比べ、B面に移るとブラス隊なども加わり、ファミリーストーンが参加していると思われるナンバーが続く。

 

それ故か不吉な影は薄く、この曲の歌詞の内容もアルバム唯一といってもいいポジティブソングだ(笑)

動きまくるベースとブラスの絡みが素晴らしいファンクチューン。

 

(You Caught Me) Smilin’

これもファミリーストーン参加と思われる親しみやすい曲だ。

 

しかし、やはりスライは苦しみの中にいるのだという事を思い出させる最後のフレーズは、聴いていて胸が苦しくなる。

 

In my pain

I’ll be sane to take your hand…

(苦痛の中でも 君の手を握れば正気でいられる)

 

Time

オルガンが印象的な3拍子のスロー・バラードだ。

 

僕はアルバム中もっとも哲学的で詩的な歌詞だと思うけど、コンサートをすっぽかしていたスライの世間に対する釈明とも取られていたらしい(笑)

 

Spaced Cowboy

何にも似ていない、超絶ブッ飛んだ1曲だ。

細かいことだが “SPACE Cowboy” じゃあなく “SPACED Cowboy” なのでタイトルもどこか変だ。

 

曲の全編を通してなんだかサーッとかブーというノイズも入っているし、とにかくおかしい。

 

黒人のファンクと白人の歌唱法であるヨーデルという取り合わせも、融合というより奇妙な取り合わせだし、言葉遊びの歌詞も完全にラリっている・・・

 

このアルバムの異常性を最も感じることのできる異常性超近未来型スライファンクの一丁あがりだ(笑)

 

Runnin’ Away

初めて聴いたはずなのに既視感(デジャヴュ)ならぬ既聴感があった不思議な曲。

 

ファミリーストーン参加曲でA面のFamily Affairとならんでキャッチーな部類に入る曲で、シングルカットもされている。

 

妹ロージーのボーカルにうっすらスライの声も重ねてあり、この兄妹のパートナーシップを聴くとこの孤独なアルバムの中では救われた気持ちになるね。

 

この曲もスライ流の変わったファンクだが、他の曲が異常すぎるので妙に安心してしまう(笑)

 

 

Thank You For Talkin’ To Me, Africa

スライ流ファンクの金字塔であり、これ以上カッコイイファンクが存在するのか?と言っても言い過ぎではないThank You (Falettinme Be Mice Elf Agin)闇バージョンであり、Africa Talks To Youへのアンサーソングにもなっている。

 

ベースはラリー・グラハムかスライなのかは定かではないが、テンポがかなり落としてあるのでヘヴィーさが倍増しているのだ。

 

スライのボーカルもたっぷりエコーがかかり、なんとも言えない孤独感を残しつつ、この世紀の問題作は幕を閉じる。

 

ファンク史上に燦然と輝く金字塔、通常バージョンのThank You 1974年の激烈カッコイイライブ!!

 

 

スライの星条旗

さて、最後にアルバムジャケットのデザインを見てこの傑作アルバム「暴動」の鑑賞を終えたいと思う。

 

全ての色の欠如である、全ての色の融合である、全ての人に流れる血の色である

この3色を基調とし、星条旗の星であるはずのところが太陽になっている。

 

スライいわく

星はたくさんあって、探求を意味するものだ。でも太陽は常にそこにいてこっちを見ててくれるんだ。

 

このスライの言葉を読むまで僕はこれを太陽だとは思わず、たくさんの銃痕だと思っていた。

この「黒の部分」に記されたたくさんのシンボルは太陽なのか、銃痕なのか・・・

みなさんにはどう見えるだろうか?

 

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