みんな元気か、トミー(@TomoyaTommy1203)だ。
映画が唯一の大衆娯楽であり、映画館が大衆の憩いの場であった古き良き時代
まさにそんな時代にタイムスリップする貴重な機会に恵まれたという話
20年ぶりのコメディ
その日は子供のダンスイベントだったのだが、集合時間から開場の時間までかなり時間があったので、子供を送ってやった後は家内と映画を観に行こうということになっていた。
場所は大阪市阿倍野区の「あべのアポロ」
作品は山田洋次監督の「家族はつらいよ」である
本作品は山田監督20年ぶりの喜劇であり、2013年公開「東京家族」のキャスト
(橋爪功、吉行和子、西村雅彦、夏川結衣、中嶋朋子、林家正蔵、妻夫木聡、蒼井優)
を再集結しての意欲作だ。
男はつらいよ、東京物語へのオマージュ
映画のタイトルそのものはもちろん、デザインからもわかるように、作品のテーマは「男はつらいよ」にも通じるもので、人間の滑稽さ、バカさ加減、人と人とが関わることの難しさの中で、やっぱり離れられない家族の姿を描いている。
作品中でも寅さんのDVDパッケージが何気なく置いてあったり、うなぎ屋演じる若手演歌歌手、徳永ゆうきが「男はつらいよ」のテーマをめちゃウマで歌うシーンなど、寅さんへのオマージュもファンには嬉しい限りだ。
また同キャストで撮られた「東京家族」は、小津安二郎監督の不朽の名作「東京物語」のリメイクであったが、本作品中でもこの「東京物語」は非常に重要な構成要素であり、実際の映像も橋爪功演じる周造(東京物語の主人公は周吉)が鑑賞しているいるシーンで登場する。
「東京物語」での周吉(笠智衆)の紀子(原節子)へのセリフ
妙なもんじゃ・・・自分が育てた子供より、いわば他人のあんたのほうがよっぽどわしらにようしてくれた・・・いやぁ ありがと
日本映画史上屈指の名シーンで、原節子と蒼井優がかぶるというのは言い過ぎかもしれないが、このセリフの持つ意味は「家族はつらいよ」においても、重要なテーマなのだ。
平均年齢60~70か
作品に関してはこれ以上詳しく解説するつもりはないし、内容も観てない方のために詳しくは書かないでおこう。
僕達がその日一番楽しんだ(驚いた)のは劇場に来ていた人達の雰囲気であり、映画の見方というものを考えさせられることにもなったのだ。
あべのアポロ自体は8スクリーンもある大きな映画館ではあるのだが、新しくできたシネコンとはちょっとテイストが違う。
どこか昭和なニオイが残っているのだ。
もちろんいい意味でである。
飲み物と定番の塩ポップコーンを買って入場したのだが、周りを見渡すと平均年齢は60~70歳といったところだ・・・
僕らなど若手も若手であった(笑)
禁止事項などお構いなし
そして映画予告とお決まりの「録画、録音はやめなはれ」「禁煙である」「携帯は切るべし」「上映中は話すな」「前の席を蹴るな」・・・という注意事項が流れる。
本編が始まり、冒頭で夏川結衣が橋爪功からの電話をオレオレ詐欺と間違うシーンからもう会場は爆笑の渦である。
その後も実にテンポよいリズムで手を変え品を変え、喜劇要素が満載なのだが、隣の人と膝を叩きながら爆笑するおばあちゃん、わかりきった解説を入れるおじいちゃん達
「上映中は話すな」という禁止事項などクソくらえ、しまいには携帯も鳴り出す始末であった。
僕たちは完全に周りの空気に圧倒されつつも、山田監督20年ぶりの喜劇作品を楽しんだのであった。
届いた監督の想い
いつから映画館では静かに観なさいということになったのだろう?
銭湯のような大衆の憩いの場としての映画館はいつからなくなったのだろう?
ニューシネマパラダイス、キネマの天地のようなみんなで楽しむ映画館の世界は残っているのか?
そんなことを思いながらあべのアポロを後にし、昼食はどこで食べようか、などと花より団子夫婦の思考はゴハンへ移っていったのである。
このような映画の見方がいいか悪いかは賛否両論あるだろうが、僕達は楽しかった。
そして後日、山田監督自身のこんな言葉をみつけるに至り
「山田監督の想いは、あべのアポロの観客にしっかり届いていたぞ!」
と嬉しさで叫びたくなったのである。
映画が始まる前に私語を交わさないでください、とかテロップが出る場合があるんですよね。あとは、前の席を蹴っ飛ばさないでください、とかね。
ああいうのは、僕はあまり納得しませんね。
お金払って入ったんだから、大声あげて笑ったっていいじゃないか、面白かったら隣の連れと語り合っていいんじゃないかと思う。
どうぞ皆さん、この映画はにぎやかに私語を交わしたりしながら観て欲しい。
心からそう思います。
‐山田洋次‐