みんな元気か、トミー(@TomoyaTommy1203)だ。
うーん、これは現在の日本を描いた預言書ではなかろうか・・・
手塚治虫の短編集「時計仕掛けのりんご」を読むとそう思わざるを得ない。
タイトルはもちろん「時計じかけのオレンジ」のパロディであるが、収められている短編が連載されていた頃はまだスタンリー・キューブリック監督の映画は公開されておらず、それどころか手塚治虫氏はアンソニー・バージェスの原作すら読んでいなかったという・・・
つまり内容もテーマも知らずにタイトルだけでパロったわけだが、”時計じかけのオレンジ” が意志を奪われた人間のメタファーであるという点は見事に共通している。
収められている短編はどれもブラックで切れ味の鋭いSF・サスペンスであり、人間の心の深淵をえぐった傑作ばかりだ。
今日はその中からぼくが特に気に入った作品を紹介しよう。
[amazon asin=”4253169953″ kw=”時計仕掛けのりんご―The best 5 “]
聖女懐妊
地球から離れた宇宙ステーションで、人間の男と女ロボットが結婚するお話。
ロボットは男との子供を欲しがるが、それはさすがに叶わない・・・
幸せな生活を送る二人だが、ある日賊に襲われて夫は殺されてしまう。
賊にこき使われる女ロボット、しかしロボットは人間に危害を加えることは出来ないようにプログラムされているので従うしかない。
そんな生活が続く中、徐々に女ロボットのお腹が大きくなっていくのだった・・・
人間、ロボット、そして神の奇跡が生み出すSFロマンスだ。
悪魔の開幕
憲法を改正し自衛隊を軍隊と言ってはばからない時の首相を暗殺する計画を立てるある思想家。
その思想家に心酔し暗殺計画の遂行を任された青年。
綿密な暗殺計画は着実に準備されるのだが・・・
自衛隊を軍隊にするために憲法を改正する・・・40年前に今の日本を予言していたかのような不気味な作品だ。
帰還者
宇宙平和コンベンションというお祭りに参加したあるヒッピーグループ。
その祭典から帰り道に事件は起こる。
水を分けて欲しいという異星人と遭遇したのだが、欲望をむき出し、有利な交渉をしようとするメンバーと早く水をやろうというメンバーが仲間割れし、女性メンバーの夫が殺されてしまう。
そして水を欲しがっていた異星人も皆殺しにして金を奪うのだった。
18年後、メンバーが一人ずつ謎の死を遂げていく。
残った一人はかつての異星人の復習に違いないと怯えるのだが・・・
人間の欲望、凶暴性が露骨に描かれた作品。
平和コンベンションの帰りという設定がブラック過ぎる(笑)
時計仕掛けのりんご
南アルプスの東に位置する稲武市。
その小都市を占拠しようと企てるテロリスト達。
しかしそれは首都制圧のための実験台でしかなかった。
偽の朝日新聞しか届かなくなり、テレビは映らない、外部と唯一の交通手段である道は閉鎖され、市民が口にする米には薬物が・・・
その薬物で市民は思考力や意志を骨抜きにされ、まさに「時計仕掛けのりんご」と化してしまうのだった・・・
トワイライトゾーンや世にも奇妙な物語が好きなら絶対オススメの短編集だ。
手塚治虫ってこんなマンガも描くんだ・・・と震えあがるにちがいない。
[amazon asin=”4253169953″ kw=”時計仕掛けのりんご―The best 5 “]