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ビートルズで音楽理論を学びやがれ! ドミナントの応用(前編)

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みんな元気か、トミー(@TomoyaTommy1203)だ。

 

前回、ドミナントやドミナント・セブンスがなぜ緊張や不安を生み、それがどういう仕組みで解決されるかを説明したね。

 

あわせて読みたい
ビートルズで音楽理論を学びやがれ! 緊張の緩和 ドミナント その2 みんな元気か、トミー(@TomoyaTommy1203)だ。   前回、音楽の気持ちよさの仕組みの一つとして、ドミナント(緊張)がトニック(緩和)へ解決する話しをしたね。 &n...

 

今日はドミナントにさらに音を加えたり変形させたりして、Vコードを味付けする方法をみていこう!

 

目次

ドミナント9th

まずはドミナント・セブンスコード V7にさらに上に音を加える方法だ。

 

ドミナント・セブンスに9thの音を加えると、ドミナント9th(ナインス)というコードになる。

9thの音はルートからみて1オクターブよりさらに上の音になるんだけど(このような音をテンション・ノートという)

例えばV7がD7だった場合、コードの構成音は次のようになる

[コード名: D9]

第9音  E(ミ)
第7音  C(ド)
第5音  A(ラ)
第3音  F#(ファ#)
ルート音 D(レ)

 

このコードの使用ですぐに思い浮かぶのは If I fell This Boy における、セクションの変わり目だ。

曲中で新たな展開を作るにあたって、どこかせつなくも色彩感あふれる景色を作ってくれるんだ。

 

If I Fell [0:58]

ジョンとポールがただのオラオラ系ロックンローラーじゃないことは、かなり早い段階で証明されることになるけど・・・この曲はため息が出るほど素晴らしい!!

 

サビ、というかCメロに入った瞬間 D9 が現れるんだけど、この部分は歌詞的には

Don’t hurt my pride like her

(前の彼女みたいに傷つけないでくれよ)

と、終わった恋の苦い思い出を繰り返さないでくれと、新たな恋の相手に強く懇願しているシーン。

ジョンの詞っぽいよね。

その苦い思い出の  her がD9に変わるところだ。

 

コードはD9に、ヴォーカルメロディはというと、ポールはテンション・ノート9thであるEを高らかに歌い、ジョンはなんとキーDのダイアトニックスケールからは半音外れたCを歌う。

 

ちょっと待て、この曲はキーがDだからD9はドミナント (V) じゃなくてトニック (I) の9thじゃないのか?

と思った人はするどい!

 

実はCメロに入ってD9が鳴った瞬間、このD派生のコードは役割が変化しているんだ。

D9の次のコードに注目して欲しい、Gだね。

 

もしCメロに入った瞬間だけ一時的にキーがGになっていると考えると、

キーGにおいて D7 → G の動きはまさに

V7 → I

のドミナント・モーションなのである。

 

D9に含まれる第7音であるシャープしないナチュラルなC音も、ジョンが失恋のトラウマに身もだえながら歌うC音もキーGではスケール内の音なのだ。

 

つまり If I fell の58秒目は、キーDとキーGという2つの情景のはざまで、ポール (9th) の高らかな希望とジョンの悲しいフラット7th、そしてさりげないドミナント・モーションが複雑に絡み合う瞬間なのである。

 

なおこの場合の G コードを、トニック化された和音(a tonicized chord

ドミナント化した D コードを、副次ドミナント(secondary dominant

と呼んだりするけど、別に覚えなくてもいい(笑)

 

メジャー6th

通常のトライアドに 6th の音を加えたのがメジャー6thコードだ。

She Loves You の最後の G6 は最も有名なメジャー6thの使い方かもしれないね。

She Loves You の G6 は I6 トニックのシックスなので、ドミナントに6thを加えている例を見てみよう。

 

What You’re Doing [0:57]

 

Beatles For Saleに収録されているポールのどちらかというと地味な曲。

この曲中にキーDのドミナントであるAコードはこのブリッジの最後にしか出てこない。

 

ブリッジなどのセクションの最後にドミナントが使われて、ヴァースの頭でトニックに戻るパターンは、数えきれないほどあるけど、ここで特筆すべきはボーカルメロディを含めた和音構成なんだ。

 

ポールならここでコードA内の音、高いAなんかでこの曲のクライマックスを大いに盛り上げることもできただろう。

しかし、ポールは

it’s me~(僕なんだ!)

という歌詞であえて大げさにハイトーンに持っていかず、コードに対して6thの F# からダイアトニックスケールの主音D までなめらかに降りていくというメロディを選んだ。

 

単純にギターコードでA6を弾くのではなく、メロディとコードの関係によってメジャーシックスのサウンドを作ってるんだね。

 

この手法は This Boy のブリッジの最後にも見られる。キーもコードも同じだし。

でもジョンのF#の方がそれまでのメロディの高さの関係で、より高く聞こえるのが音楽の不思議なところだね。

 

コードの構成音はこのようになる。

でもギターでは6thの F# は弾いておらず、ボーカルだけが F# の音を出しているわけだ。

[コード名: A6]

第6音  F#(ファ#)
第5音  E(ミ)
第3音  C#(ド#)
ルート音 A(ラ)

 

このように、ギターのコード譜だけみて

「ビートルズの曲は簡単だ」

という人も中にはいるけど、ボーカルメロディやハモリと組み合わせて多彩な和音を構成していることも多いので、油断は禁物だね(笑)

 

今日のポイント

  • VコードやV7にさらに音を重ねてカラフルに。
  • トニックコードを一時的にドミナントにすることもできる。
  • ギターコードだけ見ていてもわからないビートルズマジックがある。
  • とにかく If I Fell もパティもステキ。

 

次回もドミナントの応用編は続くよ!

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ビートルズで音楽理論を学びやがれ! ドミナントの応用(後編) みんな元気か、トミー(@TomoyaTommy1203)だ。   前回に引き続きドミナント・コードをさらに拡張したコードや、基本的なドミナント・モーションを超えた応用編だよ...

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この記事を書いた人

ビートルズ、デヴィッドボウイ、太宰治、ジョジョが大好き。
ネットにつながるスナフキンを目指し、ブログを運営する。

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