みんな元気か、トミー(@TomoyaTommy1203)だ。
前回、音楽の気持ちよさの仕組みの一つとして、ドミナント(緊張)がトニック(緩和)へ解決する話しをしたね。
今日はその仕組みについて、なんでそうなるのかをもう少し掘り下げてみよう!!
それには
V7 → I
のコード進行内の1音1音がどういう動きをしているかを検証する必要がありそうだね。
声部連結(voice-leading)
声部連結というとなにやら小難しそうな言葉だけど、要はコードとかハーモニーが動く時(変わる時)各音の横方向の動きがどうなってるかってことだ。
実際の例で確認する方が早いので、前回ドミナント・モーションのお手本に挙げたTwist and Shoutのクライマックスで見てみよう。
まず、’ahhh’ が重なり合う部分、緊張コードであるV7(ドミナント・セブンス)の構成音は次の通り。
[コード名: A7]
第7音 G(ソ)
第5音 E(ミ)
第3音 C#(ド#)
ルート音 A(ラ)
そして解放されるヴァースの頭 ‘baby, now!’ の緩和コード I(トニック)が
[コード名: D]
第5音 A(ラ)
第3音 F#(ファ#)
ルート音 D(レ)
各コードの構成音がわかったところで、この動きを次の3つのポイントに分けて分析してみよう。
- 導音の解決
- 悪魔退治、トライトーンの解決
- ルート音の動き(完全5度下降)
導音の解決
まず注目すべきは、A7の第3音 [C#]だ。
この音はTwist and ShoutのキーDメジャーダイアトニックスケールの第7音にあたる。
D E F# G A B C#
前回の In My Life のギターフレーズで説明したように、この導音と呼ばれる第7音は、主音のDから半音下がった不安定な音で、主音に動いて落ち着きたい欲求が強い音だったね。
ドミナント・コードが不安定な理由の1つが、この導音がコードのど真ん中(第3音)に含まれているからだ。
この導音は V→I(ドミナント・モーション)によって、やすやすと主音Dに解決する。
悪魔退治:トライトーンの解決
次に注目する部分は、A7の中のトライトーンだ。
3つの音による(トライアドの)ドミナント(A)よりフラット7thを加えたドミナント・セブンス(A7)の方がより緊張感・不安定感が高いと前回触れたけど、その理由がこのトライトーンの存在なんだ。
コードA7の第3音 [C#] と第7音 [G] のインターバル(音程差)は全音が3つ分(半音6つ)離れた音程で、非常に不安をあおるような響きなんだ。
ピアノやギターでこの2つの音だけ同時に鳴らしてみるとわかると思うけど、なんか不協和音っぽい気持ち悪い感じがするよね。
これは全三音(トライトーン)と呼ばれていて、昔から「悪魔の音程」とされている和音なんだ。
音の波形が持つ科学的特性と人間の聴覚上の本能によるところで、その話をしだすともはや音楽の話ではなくなりそうなので、「トライトーンは不安定な響き」と覚えておくだけで充分だろう。
V7→I と進行することで、導音のC#がDへ、フラット7thのGはF#へとそれぞれ半音だけの少ない移動で、V7コードの中に潜む悪魔は消え去るのだ!!
C# → D
G → F#
ルート音の完全5度下降
ドミナント・モーション最後の秘密は、コードの根底を支えるルート音の動きだ。
A7コードのルート音 [A] とDコードのルート音 [D] はAから見て完全5度(A G F# E D)下降することになるね。
ルート音の進行はコード進行において最も根本的な動きを司っているんだ。
そしてこの V→I の完全5度下への動きは5度進行と言って安定した進行の基本なのだ。
この表を時計回りで降りていくのが5度進行。
Cから時計回りで見ていくと、A→D というところがあるね。
この5度進行についてはまた今後詳しく見ていくことになるだろう。
今は、
ルート音の完全5度下降は最も安定した進行である。
とだけ覚えておこう。
曲の中のドミナント・モーション
今回はなぜドミナント・コードが緊張や不安を表すのか?
そしてそれがどういう仕組みで解決され、安定するのかを説明した。
では、最後にビートルズの楽曲中でドミナント・モーションが使われている曲の部分を紹介しよう。
It Won’t Be Long [0:55]
B7 → E
‘you’re coming home’ という歌詞が表すように、まさにホームであるトニックコードへ帰る部分だ。
詞と音の融合とはこういうことを言うんだろうね。
Day Tripper [1:20-1:40]
B7 → E
あの Twist and Shout の発展版ともいえる ‘ahhhh’ とドミナント・モーションによるクライマックスだ。
約20秒(12小節)にわたってB7だけで押し通すジョン・レノンの大胆不敵さ。
おまけにEで解放される時があのカッコいいギターのリフなんだから、気持ちいいことこの上なし!!
Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band [1:31]
D7 → G7
‘we’d love to take you home’
これも It Won’t Be Long と同様、「家に帰る」というワードとドミナント・モーションが重なっている。
つまり偶然ではなく、ドミナント・モーションが「落ち着いた家に帰る」という事を根本的に表現している音の動きなのだ。
他にももちろん山ほどある、というか大なり小なりドミナント・モーションがない曲を探す方が難しいくらいだ。
みんなもビートルズ曲中のドミナント・モーションを探してみよう!!
今日のポイント
- Vコード(ドミナント)にはそのキーの導音(第7音)が含まれている。
- V7コード(ドミナント・セブンス)には悪魔の音程(トライトーン)が含まれている。
- ルート音が完全5度下降するのは安定の進行。
- ドミナント・モーションでトニックに戻る(家に帰る)までが遠足。
次回はテンションなどを加えたドミナントの応用編だ!
[amazon asin=”4845632365″ kw=”コード理論大全”]
[amazon asin=”4845631431″ kw=”音楽理論がおもしろくなる方法と音勘を増やすコツ”]
[amazon asin=”463691595X” kw=”作曲少女 平凡な私が14日間で曲を作れるようになった話”]