みんな元気か、トミー(@TomoyaTommy1203)だ。
この世の全ては
「緊張の緩和」
でできていると、誰かが言ったとか言わなかったとか・・・
よく言われるのはお笑いの世界で、人が笑うのはボケが非日常であるテンション(緊張)を生み出し、ツッコミが日常へと引き戻すこと(緩和)で笑いが生まれる。
ホラー映画やサスペンスのシーンもいわば緊張と緩和の連続である。
仕事から帰って家でほっこりするのもそうだね。
そして、いい音楽を聴いて気持ちがいいのも、エッチが気持ちいいのも、「緊張の緩和」なのである(笑)
半世紀以上の時を経た今でも、ビートルズ楽曲の数々がなぜここまで人の心を捉えて離さないのか。
それを西洋音楽の理論と照らし合わせながら、その秘密に迫ろうという無謀な試みである。
と同時に自分の音楽理論や作曲の勉強のためでもあるので、間違いやおかしなところはどんどん指摘してください^^
まずは緊張の緩和の基本中の基本であり、不可欠要素ドミナントの話から始めることにしよう。
基本的には音楽理論など知らなくても楽しめる記事にしたいところだが、どうしても専門用語が出てくるのと、インターバル(音程)やスケール、コードの細かい説明をその都度していると話が進まないし、よけいに混乱する人もいるかもしれないので、わからないところは、ああそんなもんか、と適当に流して読んでね!
また、曲名(時間)と書いてある場合は、できればその曲のその時間のあたりを聴きながら読むとよりわかりやすいと思う。
例)Twist and Shout (1:24) ツイスト・アンド・シャウトの1分24秒あたり
ドミナントとは
さて、音楽の気持ちよさの基本が「緊張の緩和」であり、お笑いやセックスとイコールであるというなら、音楽における緊張とはなんだろうか?
結論から言うとその1つがドミナントである。
音楽をやってない人も「コード」というのは小耳にはさんだことがあるかもしれないね。
コードというのは音がいくつか積み重なったものなんだけど、
どんな音が積み重なってるのかと、その積み重なり方によって名前や役割が変わってくるんだ。
CとかG7とかAmとか見たり聞いたりしたことがあるかもしれない。
ギターや鍵盤楽器をやっている人なら間違いなく知っているだろう。
そして、曲にはキー(調)というものがあって、これはその曲の世界を決めるみたいな感じで、その曲の中で主に使う音がキーによって決まるんだ。
例えば、ハ長調(Cメジャー)のキーはピアノの白鍵の音がそのキーの音で
ド レ ミ ファ ソ ラ シ
ニ長調(Dメジャー)なら
レ ミ ファ# ソ ラ シ ド#
なんだけど、この各音を根音(ルート)として、その上に1つ飛ばしで重ねた7つのコードをダイアトニックコードと呼ぶ。
ハ長調(Cメジャーキー)のダイアトニックコード
I ドミソ C
IIm レファラ Dm
IIIm ミソシ Em
IV ファラド F
V ソシレ G
VIm ラドミ Am
VIIm-5 シレファ Bm-5
左端のローマ数字の記号みたいなヤツは、キーが違ってもコードの役割をわかりやすく表記するために使われるもので、この5番目のV、キーCではソシレのGコード
こいつが音楽に緊張をもたらすドミナントという機能を持ったコードなのである。
そしてこのドミナントコードはそのキーの中で不安定なので、落ち着きたい!という欲求を聴いている人に感じさせる性質があるんだ。
最初のコードである I コードはいわば帰るべき家のようなもので、そのキーの中で一番落ち着く場所(トニック)
ドミナントはこのトニックへ進みたがるのである。
コードは縦方向の重なりだけじゃなくて、横方向の動きがとても重要なポイントで、いわゆる「コード進行」が音楽の中で感情の動きや情景の色彩を表している。
このドミナントコード V からトニック I のコードへ動く時(ドミナント・モーションという)
V → I
そう、これが音楽の中で緊張が緩和される瞬間なのだ!!
ちなみに上記のダイアトニックコードでは音はそれぞれ3音づつ重ねているけど(トライアド)、もう1つ重ねた
V7 ソシレファ G7
にするとドミナントセブンスとなり、さらに不安定度、緊張度は増すと覚えておこう。
曲中の緊張→緩和
ではいよいよビートルズの楽曲中の例を見ていこうじゃないか。
といっても音楽の基本でもあり、山ほどあるので特に印象的なものを挙げてみよう。
Twist and Shout [1:24〜1:36]
この部分を思い出しただけでもゾクゾクする、まさにドミナント・モーションのお手本中のお手本だ。
オリジナルはアイズレー・ブラザーズなんだけど、ジョン・レノンがメインヴォーカルを張ったビートルズのカバーバージョンはより若く、荒々しい魅力に満ち溢れている。
曲のキーはDメジャーでドミナントコードがA、トニックコードがDとなる。
コードAの構成音は、ラ ド# ミ(A C# E)
これを “ahhhhhhhh” とジョン、ジョージ、ポールの順番で重ねていき、ルート音(A)を歌っていたジョンがフラット7の音であるソ(G)へ移動することで、A7(ドミナントセブンス)となる。
テンションは一気に高まり、もうイク寸前だ!(笑)
そして “baby now!” ヴァースの頭へ戻る時(コードはトニックのDへ)一気に張り詰めた緊張が開放されるのである。
Twist and Shoutとはもちろんセックスのことを歌ったものであり、音と詞の両面で見事なまでに「あの行為」を表しているんだね。
In My Life [ギターによるメインリフ]
In My Lifeのイントロやヴァースに戻る前にたびたび登場するギターのフレーズ。
コードによるドミナント・モーションではなく、導音(単音で緊張を表す音)によるテクニックの好例だ。
この曲のキーはAで、フレーズ中のコードの動きとしてはA→Eなので、
I → V
を繰り返しているんだけど、問題はこのギターフレーズの最後の音がG#というキー中のセブンスの音で終わっていて、なんとも宙ぶらりん感を残したまま放置プレーなところだ。
あと半音上がればAになって、キー中で最も落ち着く音なのに・・・
うーん、じらさないで!!
しかし、この寸止め的プレイから開放されるのは、まさに曲の最後の最後のA音を待たねばならない。
この不完全終止 (imperfect cadence) をさんざん繰り返したあとの完全終止による終った感、開放感はハンパないのである。
あーもう一回聴きたい、またじらされたい・・・のだ(笑)
このように時間差による緊張・緩和テクニックもあるんだね。
Back in the U.S.S.R [のっけから緊張]
ホワイトアルバムの冒頭を飾るこの曲はのっけから緊張感を漂わせている。
イントロとはいうものの、印象的なメロディやリフが奏でられるわけでもなく、BOAC機のジェット音が聞こえたと思ったら、ギターが申しわけ程度に不安定なチョーキング音を鳴らす、そしてE7のコードが響くだけの一見取って付けたようなイントロなんだけど・・・
のっけから緊張・・・と書いたが、コードチェンジが一度も行われていないイントロの段階では、このE7がキーAにおけるドミナントセブンスであることは誰にもわからないのである。
ポールが ‘Flew in from Miami Beach BOAC!’ と歌い出してコードがAから進行して、はじめてこのイントロのE7がキーAのドミナントだったと感じるはずなのだ。
同じくE7で始まる I Saw Her Standing There は単純にキーEのトニック始まりなので、USSRのイントロとは全く性質が逆のE7ということになる。
もう今ではこの曲を初めて聴いた時の感覚を思い出す方法はないけど、キーがAになることを耳が知っている今と、初めて聴いた時ではひょっとしたらこのイントロの聞こえ方は全く異なっていたかもしれない。
ジェット機が着陸する直前のあの緊張感、不安定感を見事に表したイントロといえるね。
イントロのE7が着陸寸前、歌に入ってAになった時が着陸完了だ。
このシンプルなロックナンバーを飽きのこないものにしているのは、このイントロのテクニックによるところが大きいのかもしれないね。
これはちょっと確証のないことだけど、BOAC機のジェット音、ギターのチョーキング、歌に入る直前のohhhというポールの叫び声・・・これらの要素がキーをAとして予感させているのかもしれない。
だとしたら、恐るべきビートルズマジック!!
今日のポイント
- 音楽的快感の基本は緊張の緩和
- Vコード(ドミナント)で緊張を生み、Iコード(トニック)で緩和
- Twist and Shoutはまさに「アレ」
次回はドミナントが緊張を生む秘密にせまってみよう!