みんな元気か、トミー(@TomoyaTommy1203)だ。
デヴィッド・ボウイのアルバムから1枚チョイスするのはかなり苦しい決断をしないといけない。
時代によって全然やってることが違うので、1枚1枚ジャンルが変わると言っても言い過ぎではないくらいの変貌ぶりだからね。
まあでも、1アーティストが生み出す神がかり的なアルバムというのは、あっても1〜2枚が限度。
そういう意味でこの1972年リリースのジギー・スターダスト(原題:The Rise and Fall of Ziggy Stardust and the Spiders from Mars)は間違いなく製作時に神が降りていたレコードだ。
主要メンバーは
- デヴィッド・ボウイ – vo, guitar, sax
- ミック・ロンソン – guitar, vo, piano
- トレバー・ボルダー – bass
- ミック・(ウッディ)・ウッドマンジー – drums
このバンドの存在も含め、アルバムはストーリーを持ったコンセプト・アルバムになっている。
滅び行く地球に舞い降りた救世主ジギーを名乗り、スパイダーズフロムマーズというバンドを引き連れて地球にやってきたロックスターという設定・・・
こうして文字にすると、超ダサい気がしないでもないが(笑)
当時のボウイは人格分裂を起こすくらいジギーというキャラへ入り込んでいた。
その徹底ぶりにファンも狂喜し、異界のロックスターが目の前に現れた、神が降臨したにも等しい興奮を覚えたはずだ。
ちなみに当時日本では
「屈折する星屑の上昇と下降、そして火星から来た蜘蛛の群」
という、わざとなのかマジなのかどっちとも言い切れない直訳のアルバムタイトルで発売されていたが、これも今となってはいい味だしてる(笑)
A面
Five Years(5年間)
ウッディ・ウッドマンジーの乾いたドラムからフェイドインし、神話は幕を開ける。
あと5年で地球は滅ぶという絶望の中での人々や街の風景を描いたロックワルツ。
歌詞がとても良い。
叙事詩的なので、うまく訳したとしても雰囲気ぶち壊しである、原文のまま味わってほしい。
一部を抜粋しておくね。
I think I saw you in an ice-cream parlour,
drinking milk shakes cold and long
Smiling and waving and looking so fine,
don’t think you knew you were in this song
And it was cold and it rained so I felt like an actor
And I thought of Ma and I wanted to get back there
Your face, your race, the way that you talk
I kiss you, you’re beautiful, I want you to walk
Soul Love(魂の愛)
この曲もウッディのドラムソロで始まっている。
ボウイはよほど彼のドラムが好きだったのだろう。
本アルバムでは12弦アコースティック・ギターのサウンドが特徴の1つとなっており、ライブでもジギーはよく12弦アコギをかき鳴らしていた。
奇想天外で派手な衣装にアコギを抱える姿は、おしっこちびるくらいカッコイイのだ!
イントロのアコギ、サックスのソロもあり、ボウイが演奏面でも頑張っている感じがする。
ハデさはないが大好きな曲。
Moonage Daydream(月世界の白昼夢)
ライブでも定番となっていたアルバムの中でも代表的な1曲だね。
歌詞は訳しても意味不明なくらいイッちゃってる。
地球に降臨したジギーの自我が徐々に出始めて、君たちをロックで虜にしちゃぞ!!!
・・・うーん、日本語で書くとやっぱりダサい(笑) とにかく、ミック・ロンソンの地球外的ギターにしびれろ!!
Starman
キターー!! アルバムの4曲目は名曲が多いというぼくが勝手に作ったロックの法則のとおり、全く隙のないキャッチーなロックチューンだね。
1972年にTop of the Popsというイギリスの音楽番組出演時の映像を観てほしい。
青い12弦アコギを弾きながら、ミックと仲良く1本マイクで歌い、時折カメラ目線でこちらを魅了するボウイは性別を超えたカリスマに溢れ、ぼくなんかは観ているだけで涙が出てくるのだ。
It Ain’t Easy
アルバム中唯一のカバーソングなのだが、なぜこの曲をカバーして本アルバムに入れようと思ったのかはよくわからない。
これでA面のトリ飾る?って感じ(笑)
B面
Lady Stardust
レコードの片面が素晴らしい場合、反対側も素晴らしいということはなかなか少ない。
が、このジギー・スターダストのB面は、A面からの期待に十分応え、さらにそれを上回るものだ。
そうでないと神がかり的なアルバムとはいえないよね。
Ladyとは言っても、歌われているのはジギーのことなのだろう。
地球に降臨したジギーのステージ風景と観客が描かれている。
ピアノが主体のサウンドで、ぼくはタイトルチューンのジギー・スターダストよりこちらの方が好きだ。
Star
A面がジギーのロックスターとしての栄華 (rise)、B面が没落 (and fall) を描いているならば、落ち目を感じ、やたらスターという存在にこだわり始めているジギーが見られるのがこの曲だ。
I could fall asleep at night as a rock & roll star
I could fall in love all right as a rock & roll star
夜はロックスターとして眠りたい・・・ ロックスターとして恋に落ちるんだ・・・
ここからジギーの生活は荒れ、破局への道をまっしぐらに進んでいく・・・
Hang Onto Yourself(君の意志のままに)
ライブの1曲目でよくやっていた文句なしにカッコイイロックナンバーだ。
この頃まだパンクは出現していないが、ボウイの12弦アコギとミックのエレキはすでにパンクしている。
グルーピーと乱痴気騒ぎするジギーだが心は満たされるはずもない。
Ziggy Stardust(屈折する星くず)
ついにジギーについて歌われるタイトルチューンの登場だ。
これによるとジギーは左利きの激ウマギタリストで、歌も歌うという。
歌詞の中にvoodooという言葉も出てくる・・・ということでジギーはジミ・ヘンドリクスの影響が多分にあることが伺える。
ジギーは宇宙人なのか?神なのか?それともただのロックスターに憧れる人間なのか? じゃあ今までの話も全部こいつの狂った妄想か!?
すべては謎のままアルバムはクライマックスを迎える。
Suffragette City
婦人参政権・・女性讃歌だ!
・・・んなわけはなくただファンの子とヤリたいだけのジギーはあの手この手を使ってやろうとする。
仲間にも出てけといい、薬と女に溺れるジギーはもはや神でもロックスターでもなく、ただのジャンキーに落ちぶれてしまった。
彼のロックスター伝説を汚さないためには、ファンに殺されるか、自ら命を絶つしかしか道は残されてないのだった・・・
Rock’n’Roll Suicide(ロックン・ロールの自殺者)
人々はジギーに失望してしまった・・・
ジギーがあと5年で滅亡する地球を救う救世主や神ではなく、自分の欲望を満たすためだけに僕たちを利用したんだと。
ステージでのうのうと歌っているアイツを殺しちまえ!
ジギーは絶望した人々の苦悩を一身に受け、死んでいくつもりだったのか?
ロックンロールで人々を救えると思っていたのか?
それとも、本当にただのジャンキーだったのか?
それは彼が創りだした音楽を聴いたあなたが決めることだろう。
ジギー時代の終焉
1972年にリリースされたこのアルバムは、宇宙のすべての要素が味方して生み出されたような神がかったレコードだ。
人が夢を本気で追うならば、全宇宙が味方してくれる
ボウイ自身がなんと言おうが、商業的成功を収めるだけの目的でこのようなレコードが作れるわけはない。
日本の歌舞伎、山本寛斎のデザイン、キューブリック的世界観、女装・・・
当時のボウイの持つ要素すべてが絶妙のバランスでブレンドされ、化学反応を起こし爆発したのだ。
一躍時代の寵児となったボウイだが、1973年6月に国内ツアー最終日のステージ上で、突如ジギーの存在をすべて否定し、ファンもバンドメンバーやスタッフすら寝耳に水の爆弾発言とともにジギーを演じることをやめてしまう。
このツアーは僕の人生で最高のものになった。
今日のステージは一生忘れないだろう。
なぜならツアーの最終日というだけではなく、このバンドも今日で最後だからだ。
ありがとう・・・
そしてステージはラストチューン「ロックンロールの自殺者」と観客の悲鳴が入り交じる中幕を閉じる。
ジギーに人格を侵食され過ぎたボウイは、飲み込まれるギリギリのところで自分の人格を取り戻したかったのだろう・・・
同年1月8日に最新アルバムBlackstarをリリースした直後。
死ぬ間際まで現役でロックし続けたボウイ、安らかに眠れ。
追悼記事はこちら
Ziggy時代の儚いボウイを追体験できる貴重な映像